1)Adobe AIRアプリケーション開発事例
廃棄物処理・リサイクル施設の事故を減らすデータ分析アプリを開発
特定のOSに依存せず、デスクトップ環境でリッチインターネットアプリケーション(RIA)が実行できる「Adobe AIR」は、グラフィック機能に優れ、より操作のしやすいプログラム開発が可能です。
早稲田大学の永田勝也研究室でも「Adobe AIR」を活用し、研究成果を実用可能なアプリケーションとして提供しようとしています。今回、開発にあたり中心的な役割を果たした大学院・修士課程2年の伊原克将さんに「Adobe AIR」活用のメリットや開発までの道のりについてうかがいました。
1)全国3,700件を超える事故・トラブル・ヒヤリハット事例を収集
永田研究室では、環境配慮型モビリティシステムの開発・運用、企業・都市等の環境評価指標の開発・センシング・応用などを研究しています。
伊原さんの専門は「システム安全・安心体系の構築・高度化」で、「静脈施設における安全対応策に関する研究」をテーマに研究を進めてきました。
「静脈施設」とは廃棄物処理施設やリサイクル関連施設のことを指し、これらが循環型社会を実現するにあたって重要な役割を担うことから、人体の血管になぞらえてそう呼ぶのだそうです。その静脈施設では、ごみをためる「ピット」に人が落ちたり、ガスボンベが混入したために清掃車が火災を起こすなど、さまざまな事故やトラブルが発生しています。発生率は全産業平均の3倍以上というデータもあるほどです。
永田研究室では、静脈施設の安全性を高めるには、事故が起きたときの運転状況や作業状況の情報をもっと定量化し、作業者から管理者だけでなく技術研究者やプラントメーカーといった業界全体に広く伝える必要があると考えました。
そこで全国から約3,700件の事故やトラブル、ヒヤリハット事例を収集し、危険度を数値化するためのデータベース構築を行いました。さらにデータベースから「何がどうなったとき、人がどのような作業をしていると、どんな事故が起きやすいのか」「どのような対応を取ると、事故損害額がどのくらい抑えられるか」といったリスク面に着目しながら整理を行ったのです。
2)誰でも使いやすい操作感を意識しました
施設で直接作業に携わる作業員から、業務を管理する管理者まで、さまざまな立場の人がデータベースを使えるようにするには、どうしたらよいでしょうか。データをそのまま渡すのではなく、視覚的・感覚的に伝わりやすい形に加工する必要があると伊原さんは考えました。
「パワーポイントのスライドは相当な数を作成していて、データを視覚的に見せるための作業は行ってはいました。でも『原因』や『作業内容』といった項目を新たに組み合わせる場合、データベースからその都度、抽出して作成し、説明を加えていかなければならい煩雑さが残っていたのです。これではコンピュータに精通している人がいない施設では活用できません。
Adobe AIRなら、現場の作業員から施設管理者まで、簡単な操作でリスク分析できるアプリケーションが作れると考えました。Flashをベースにしているため、グラフィカルなインターフェイスが作れますし、WindowsやMacなどの異なるOSでも動かせるからです。」
その結果生まれたのが「リスクシナリオ」や「リスクマップ」といった視覚的にわかりやすい形でデータを見せていくアプリケーション「WASEDA SAD」でした。項目を選んでいくだけで、どのくらい危険度があるのか、何をどうしたら事故が減るのかが分かるようになっています。簡単な操作で、約3,700件のデータから割り出したリスク(危険度)を瞬時に算出することが可能です。
「手順を追っていけば誰でも安全評価が簡単に行えるようになります。例えば、清掃員が集まる現場で終礼の時などに動かしてもらい、『フォークリフトとの接触事故の発生率が高いので気をつけよう』というように、安全を喚起するツールとして使うことができると思います。
また管理者や技術者の場合は、施設・設備そのものを評価したり、報告書を作成する際に活用できるのではないでしょうか。例えばごみピット内での火災事故は、設計ミスよりも実はヒューマンエラーによるリスクが高く、被害額も大きいのですが、このアプリケーションを使えば、グラフで比較しながら見せることができます。」
![]() ▲リスクシナリオ1 【拡大】 |
![]() ▲リスクシナリオ2 【拡大】 |
←事故発生時の諸条件により、事故の損害額がわかるWASEDA SAD。チャートをたどるだけでデータが抽出できる。色分けされたわかりやすインターフェースが特徴だ。 |














